最古のタロット ヴィスコンティ版

 

ヴィスコンティ版キャリー・イェール・パック/Cary Yale Visconti Tarocchi Deck

現在はアメリカ、コネチカット州イェール大学のベイネック図書館に保管されています。もともとはアメリカのトランプ収集家、キャリー家の個人コレクションのひとつだったことから、「キャリー・イェール・パック」と呼ばれるようになりました。タロットの詳細

多くの研究者たちが、キャリー・イェールパックの「恋人たち」のカードにサボイ家の家紋が見られることから、ミラノ第三公爵フィリッポ・マリア・ヴィスコンティとサボイ・マリアの1428年の結婚記念であると考え、これが最古のデッキであることを主張しています。

上記)タロットアートヒストリーVol.1より

 

小アルカナの槍と剣。原始的趣向が感じられます。

   

WANDではなく、STAVE=さお、つえ、こん棒・・絵柄はおそらく戦闘用の「槍(やり)」です。

 

別名:Tarocchi Visconti di Modrone

当初復刻作品を販売したモドローネ氏にちなんで「ヴィスコンティ・ディ・モドローネ」とも呼ばれています。

 

ヴィスコンティ版ブレラ・ブランビラ・パック
The Visconti Brera-Brambilla

ミラノ第三公爵フィリッポ・マリア・ヴィスコンティの爵位1412~1447年に描かれた可能性が強いデッキ。この版に見られるのが多くヴィスコンティ家の紋章で、スフォルツァ家の紋章はほとんど見当たりません。

IlMENEGHELLO復刻版

ブランビラ版では、湾曲したソードが非常に美しい!紺碧と金彩色があいまってこの世のものとは思えない剣の絵札。

 各スートが10枚の数札と4枚の人物札といういわゆるタロットの標準的な小アルカナの構成が確立されていることから、これがいわばヴィスコンティ版の完成形であり、よりもっと不完全なキャリー・イエール版はその過程にあった試験的なものなのかもしれないと、タロット研究家マイケル・ダメットは述べています。ILMeneghelloのディレクター、クリスティナ氏もキャリー・イエール版をブランビラ版の「モデル」だと述べています。
筆者はまた別の意味で、CY版は「原画」なのでは? タロットアート・ヒストリーNO.1の文中に記していたかと。

あまりにも現存する大アルカナが少ないブランビラ版。もしかするともともと大アルカナは22枚よりもっと少なく設定されていた可能性もあるのではないかと指摘する研究家も存在しています。

これで宮廷遊戯が、いわゆるカードゲームが行われていたという説はあまりにも有名ではありますが、マイケル・ダメットが述べているように、「トランプのようなゲームなら」札に数値が振られている必要があったはずだと、筆者も強く同感するところなのです。 剣でも槍でも、いちいち何本描かれているかを数えていられませんよね・・・トランプのようなゲーム・カードであれば。
現存するマルセイユ版の数札にも、数値は振られていません。

トランプのように決して画一的ではないその並びに、「そもそもタロットとは何なのか?」のカギがあるのですね。算用数字の数値が重要なのではなく、純粋に「何がいくつどのような配置で描かれているのか」そのパターンがタロットの場合は重要なのでしょう

 

ヴィスコンティ・スフォルツァ・タロット・ベルガモ・パック
Visconti-Sforza tarot(Bergamo Pack)

1450年以降、ヴィスコンティ家の婿養子にしてミラノ第四公爵、フランチェスコ・スフォルツァのために描かれたものと類推される。スフォルツァ家とヴィスコンティ家の紋章が最も多く並べられて描かれており、最も新しくかつ実用的なヴィスコンティ版とされています。

※悪魔、塔、剣の3、貨幣の騎士が欠損とされているのみで完成度が高いデッキ。

タロットの標準パターンとされる札構成=78枚の内、74枚が現存しているという極めて完成度が高い最古のタロット、ヴィスコンティ・スフォルツァ・ベルガモ・パック。

この完成をもって、大アルカナ22枚と小アルカナ56枚というタロットの構成スタイルが確立したという可能性がうかがえるわけですが、その際、進化したはずのベルガモ版の剣の絵札が湾曲していないのは何故か?

スタイルとして逆戻りした理由は?と考えてしまう一方で、そうかこれが、フィリッポ・マリア・ヴィスコンティのタロットと、フランチェスコ・スフォルツァのタロットの違い、そういう見解にも及び至ることが可能なわけですヴィスコンティ版とは言わずスフォルツァ版と銘打ってもよさそうな

 

以上、山川出版社「タロットの歴史」を経て、日本タロット占術振興会会報誌、タロットアートヒストリーなどのまとめとなり、現行調査はここまで進んでいます。

最新の研究成果はILMeghelloの刊行物がお勧めです。

共に皆様といっしょに研究活動進めさせて頂ければ幸いです。イタリアをめぐるタロット・ツアーなども企画中です。

これらは発祥時期※において、決してプレイング・カードなどとは、呼ばれていなかった代物なのです。

次回へ続く

 

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